
マンションでペットを飼育するかどうかは、住民の生活環境に大きな影響を与える重要な判断です。トラブルを防ぎ、快適な住まいを維持するためには、ペット可否の方針を明確にし、ルールや管理体制をしっかり整えることが不可欠です。本記事ではその判断基準や管理のポイントについて解説します。
ペット飼育OKの基準があいまいになるとトラブルが起こりやすい
マンション生活において「ペットを飼ってよいかどうか」は、しばしばトラブルの火種になります。動物を家族の一員として迎える家庭が増える一方で、騒音やにおい、アレルギーへの懸念から、ペット飼育に反対する住民も少なくありません。
とくに管理規約にあいまいな記載があると、住民間の対立が生まれやすくなります。実際に、築10年のマンションで「他人に迷惑をかけるペットの飼育は禁止」と管理規約に記載されていたにもかかわらず「ペット飼育可能」と説明された購入者が犬や猫を飼育していたという事例があります。
このマンションの場合、1割程度の住民がペットを飼育していました。しかし、理事会には「規約に違反しているので飼育を禁止すべき」との苦情が寄せられていたのが実情です。
このように、曖昧な規約があると「他人に迷惑かどうか」は個人の主観に委ねられ、判断が分かれます。ある人にとっては全く気にならないペットも、別の人にとっては大きなストレスになるかもしれません。
ほかにも、ペットに関する規約について裁判となった事例があります。平成10年3月の最高裁判決では「ペットの飼育を禁止した規約は有効」とされ、また平成17年4月の名古屋高裁判決では「総会決議の効力を規約と同様に認める」との判断が示されています。
つまり、しっかりとした総会手続きを踏めば、飼育禁止や許可に関する規約の改正は法的にも有効とされ得るのです。
住民もペットも気持ちよく暮らせるマンションにするには?
近年はペットブームや少子高齢化の影響もあり、ペット可のマンションが増加傾向にあります。ペットが心の支えとなっている高齢者も多く、社会的にもペット飼育に対する寛容度が高まっているのは事実です。
しかし、その一方でペットに苦手意識や健康上の理由で反対する住民がいるのも現実です。こうした背景から、ペット可否の判断は感情論に流されず、全体のバランスを取った冷静な対応が求められます。
まずは、管理組合が主体となってアンケートなどを実施し、住民の意向を把握することが第一歩です。築年数が経てば住民の入れ替わりも進み、状況も変化しています。
過去のルールをそのまま維持するのではなく、現状のニーズや価値観を反映した議論が必要です。意見が集まったら、説明会などで情報を共有し、住民同士の対話の機会を設けましょう。対応策としては次の3つが基本になります。
・ペット飼育を全面的に認める
・完全に禁止する
・一定の条件付きで認める(一代限り、登録制など)
現実的な折衷案としては「現に飼育されているペットに限り、一代限りで飼育を認める」といった対応も可能です。ペットクラブを設け、飼育負担金を集めて自主ルールを運用しているマンションもあります。
最終的な意思決定は、総会での議決によって行います。可能であれば、後のトラブルを避けるためにも、特別決議(組合員総数および議決権総数の4分の3以上の賛成)で明確な結論を導きましょう。
飼育のルールとして定めておきたいこと
マンションでペットの飼育を可能とするには、まず「ペットを飼育しない方の住環境を守る」ことを前提に、明確なルールを設ける必要があります。
とくに、もともとペット飼育が禁止されていた物件である場合はなおさら最大限の配慮が求められます。ここでは、飼育ルールとして最低限定めておきたい5つのポイントをまとめます。
①飼育できる動物の種類や数を限定する
ペット飼育可とはいえ、無制限ではトラブルの元です。たとえば「1住戸あたり2頭羽まで」「犬や猫は体長50センチ、体重10キロ以内」などの上限を設定します。さらに、猛毒をもつ爬虫類や猛禽類などの危険動物は別表で禁止対象としておくことも重要です。
②飼育動物の届出・登録の義務化
管理組合が飼育動物を正確に把握するために、「事前に申請書を提出し、理事長の許可を得ること」といったルールを設け、承認・不承認の通知を文書で行う仕組みを整えます。
③専有・共用部分での飼育方法を明確にする
ペットは専有部分内で飼育し、共用部分ではキャリーに入れるか抱きかかえることを義務付けましょう。餌や水やり、排泄行為を共用部分で行うことを禁止し、汚れた場合の速やかな処置も定めておきます。ペットの鳴き声・臭い・毛の飛散にも配慮し、清掃や健康管理、損害保険加入も推奨されます。
④違反者への対応措置
ルールを守らない場合「理事長は飼育禁止を命じることができる」「違反者は速やかに新たな飼い主を探し、動物の飼育をやめること」などの措置も細則として明記しておきます。
⑤その他の必要規定
標識の掲示、定期的な写真の提出、年1回の健康診断の義務、狂犬病予防注射の徹底など、飼育に伴う実務的なルールも定めておきましょう。また、マンションの維持管理費の一部として「飼育負担金」の徴収を行うケースもあります。
まとめ
マンションでのペットの飼育にはさまざまな問題がつきまといます。飼い主にとってはかわいいペットも、音やにおいが気になる人やアレルギーをもつ人にとっては迷惑だと思われてしまうでしょう。マンションでペットを飼育するには、ルールをしっかりと整備し、周知・遵守を徹底させることが不可欠です。また、必要であれば、管理会社に相談してみるのも手です。ペットを飼う人とそうでない人が気持ちよく共生できるマンションを目指しましょう。
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引用元:https://inovv.jp/
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